未来づくりインタビュー vol.3 【株式会社たねや】

2019.11.25

未来づくりインタビュー vol.3 【株式会社たねや】

2019.11.25




山本昌仁(やまもとまさひと)さん
たねやグループCEO 山本家十代目当主
1872年創業の和菓子店たねやの4 代目代表取締役社長。
1994年の全国菓子大博覧会で「名誉総裁工芸文化賞」を受賞。
2013年たねやグループCEOに就任。
著書:近江商人の哲学 「たねや」に学ぶ商いの基本




屋根一面が芝におおわれた、ラ コリーナ近江八幡のメインショップ。年間310万人が訪れる。

”「ここに生まれてきてよかった」と誇りをもてる近江八幡を創る”


中村 :
たねやさんは『お菓子屋さん』という枠を超えて、地域づくりや社会づくりに取り組まれていらっしゃいますが、その原動力についてぜひお教えください。

山本さん :
これは、この地域がそうさせているんですね。先祖代々、この地域の近江商人が「自分の利益ばかりを考えて物事を進めてはならない。少しでもその地域が良くなればという心構えで商売しなさい」という考えを持っていまして。父親から引き継いだこと、あるいは先代から引き継いだことっていうのは当然あるんですが、もうこの地域にいらっしゃる先輩方が、皆そういう考え方なんですね。

中村 :
この地域がそうさせているってすごいですね。

山本さん :
ここまでたねやが長く続いてきたのは、先代からずっとこのような不動のものがあるからだと思うんです。それを守りながら、その時代に合ったことをやってきたことが、結果的に現在まで続く商売につながっているわけです。少しずつ形は変わっていても、決して変わらないものがあるんですね。
例えば、木は幹がないと枝も葉っぱも生えないですよね。幹を年々成熟させて、先代より確実に、少しずつ少しずつ太らせるっていうのが、私たちの使命だと思っています。





メインショップを抜けると、目の前には田んぼと右側には本社が現れる。

中村 :
なるほど。たねやさんが、次世代リーダーが議論する場 ”NELIS”(ネリス) に賛同しているのも、やはりこの地域、近江八幡のために行われているのですか?

山本さん :
ええ。お菓子屋を東京でやれば、いろんな方々に来ていただけると思うんですけど、一方でラ コリーナのある滋賀県の近江八幡は交通の便も不便。ここに来るメリットより、遠いというデメリットのほうが多い感じですね。

中村 :
確かに、ちょっとここへ来るのは大変でした笑。

山本さん :
ここは今、どんどん人口が減っていますが、私たちが愛するこの地域を「近江八幡に住んでみたいな」「この場所で人生を終えたいな」と思えるような環境に整えていくことで、この地域がさらに長い未来へ続いていくと思うんです。
それが、お菓子屋として、この地域にできる精一杯のことだと思います。NELISも、その一環ですね。新しいリーダーを育てることで、この近江八幡の取り組み、魅力を世界中に発信できたらと思っています。



メインショップ入り口にある、ラ コリーナのマップ。

中村 :
そうなんですね。なぜ「近江八幡に住んでみたいな」と思える環境づくりが、ラ コリーナの建設につながったのですか?

山本さん :
ラ コリーナは今、甲子園球場3つ分以上の敷地があり、たくさんの方がお客さんや従業員として入ってきています。
このように、地域全体に環境も含めて盛り上がる動きが広がっていけば、「近江八幡ってこういう町なんよね」って誇りに思えて、「東京とか大阪と言われる都心に行かなくても、滋賀県の中で商売ができる!」という、近江八幡への力強さを感じていただけるかもしれないと思っています。

中村 :
なるほど。確かに私もここにきて、近江の魅力にとても惹かれました。

山本さん :
実際は、どんどん外に人が出ていく状況ですし、出ていなくてもベッドタウン化してるというのが、滋賀の現実ですが、せっかくここで産まれて生きているし、住んでいる。だから、「ここにいて良かったな」って思える、そういう環境を整えたい。
まあいずれにしても、そもそもは私たちはこの地域を愛しているんですよね。だからこの地域がこれから先も続いていってほしいという思いで、取り組んでいるんです。




メインショップの天井には、ラ コリーナのシンボルである蟻をイメージしたように炭片が貼り付けられています。

”近江八幡全体でオーガニックしか育てない環境を”


中村 :
今、近江八幡をより魅力的な町にするために、このラ コリーナを通して、これから具体的に取り組んでいこうとされていることはありますか。

山本さん :
私の代でどこまでできるかわからないんですが…
自分が生きている限りは近江八幡で徹底してお菓子屋さんを貫きたいと思っています。その中で、お菓子の原料ができる土が大事ということで、17年前から農園事業もやっています。

中村 :
農園事業ですか?

山本さん :
はい。これからは、自分たちの農園だけでなく、私達の契約している農家の方々にもどんどん目を向けていって、最終的には契約している農家さん、そして近江八幡全体が、オーガニックしか育てないというような環境を、今から創っていかなければと思っています。そのために、まず私たちが行動に移さなければということで、自分たちで育てて、自分たちで収穫して、自分たちで食べてみる。あるいは販売してみる。まあこのようなことをやっています。



ラ コリーナの真ん中には大きな田んぼがひろがっています。

中村 :
確かに、まずは自分でやってみるって大切ですよね。

山本さん :
そうですね。オーガニックは高いとか、歩留まりが悪いとか、商売にならないとかいうのが、良く言われることで、だから皆オーガニックを作らない。
でも、そうじゃないんですと。自分達で育てたものは自分達で価格をつけると。世の中の価格って、100円のものなら80円にしよう、50円にしようっていう商売の仕方が今までだったと思うんですけど、これからは100円のものが、ストーリーさえあれば、しっかりと適正な値段でも売れるんだということを、我々が証明できれば、必然的にそういう風に右に倣えになってくると思うんですね。

中村 :
確かにお手本があれば、これまでの考え方にとらわれず、オーガニックに挑戦しやすくなりますね。オーガニックが当たりまえになっている地域もまだないと思うので、それはとても魅力的ですね。また、そういう地域は環境にもとても配慮した地域になりそうですね。

”今お預かりしている地球をより良いものにするためにお菓子屋ができること”



山本さん :
人間が生きていくということは、今お預かりしている地球をより良いものにするにはどうすれば良いのかを考えて、種を植えていくことだと思うんですね。

私達もやはりプラスチックを沢山使っているんです。
保存するためにビニールの袋に入ってたり。使わざるを得ないときが沢山あるんですよ。
これも近い将来は必ず0にするという考えのもとに、私達がお世話になっている協力業者の方にいろいろ投げかけています。

中村 :
もうすでに業者さんと一緒にとりくまれているんですね。

山本さん :
はい。たねやグループではすでにストローを紙のものに切り替える取り組みも進めています。本当に些細なことなんですけど、高いからとか安いからじゃなくて「まずは始めること」が大事なんです。
将来のことを見据えると、特に環境問題は、今から取り組んでいかなければならないと思っています。

常に先を見て、このままだったら近江八幡がゴミの山になってしまうんじゃないかなという思いの中で私たちができることを考える。
1グラムでも良いからプラスチックやゴミを減らすという、そういう努力をするということが、環境問題の中では重要なことなんじゃないかなと思っていますね。

中村 :
遠足に行ったら、来たときよりも綺麗にして帰りましょうって小さい頃から言われますもんね。


山本さん :
はい。価格競争に入ってしまうと、環境ってどんどん悪くなるんじゃないかなと思っているんです。
これから先も一菓子屋としてやり続けていくっていうことは変わらないですし、将来的には、この近江八幡をベースに、今ある北海道から沖縄までの業者の方や農家の方々としっかり手を組んで良い材料を私たちが確保して、それをお客様に食べていただくための土壌をどう育てていくのか?を考えて取り組んでいきたいと思います。

10年後に近江八幡に来ていただいても、たねやはお菓子屋をしているでしょう。20年後に来てもそうでしょう。
私達の夢はお菓子屋をやり続けていくということですので、そのために今何をすべきかということを常に考えて、これからも取り組んでいきたいと思います。

中村 :
これまで、近江商人の「三方良し」という経営哲学は、売り手と買い手だけでなく、社会にも良くないといけない、という順番で勝手に解釈していましたが、山本さんのお話を伺い、まず社会のために働き、その結果、売り手も買い手も良くなる。という順番だったのだと思いました。この近江の魅力と一緒に、この経営哲学もぜひ世界中に広まっていってほしいです。本日はとても勉強になりました。ありがとうございました。



インタビューさせていただいた
商品・サービスのご紹介




たねや

1872年創業の和菓子屋店。和洋の枠組みにとらわれず、上質な和菓子を作り続けている。
代表銘菓のふくみ天平(てんびん)は、「職人だけが知るつくりたての美味しさをお客さまにも」という思いから生まれた、自分で合わせて食べる画期的なもなか。

そのほか、バームクーヘンの「クラブハリエ」も展開。
ラ コリーナ近江八幡には、年間310万人もの人が訪れる。

たねやグループ
〒523-8533
滋賀県近江八幡市北之庄町615-1
TEL:0748-33-6666
https://taneya.jp/


未来づくりインタビューとは


これから子どもたちが生きてく”100年先の未来”のために、美しい地球・より良い社会を残そうと取り組まれている方々の活動内容や、想いをインタビューさせていただく企画です。
皆さまの日々の生活を考えるきっかけになれば幸いです。


SHARE

  • Twitter
  • facebook
  • LINE