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未来づくりインタビューvol.1【発酵食堂カモシカ】

更新日:2019.09.10

未来づくりインタビューvol.1【発酵食堂カモシカ】

更新日:2019.09.10

出産・子育てを経験して「命の圧倒的力、そして人は何かを生み出せる存在であること」に気づいた。


 

中村:元々バリバリのキャリアウーマンだった関さんが、なぜ京都で発酵食堂を始められたのですか。

:私、人生の転機が2つあって、一つは出産なんですけど。

吉村医院という、古民家に妊婦さんが集まって薪割ったり柱磨いたりしながら体を鍛えて、お産するところで最初の子を出産したのですが。
そこで「命を生む」ことの大変さと喜びを深く体験して、自分が「何かを生み出せる存在」だという自信がついたんです。

実は人間は命を生み出せるのだから、食べるものを育てたり、保存食を仕込んだり、
料理もできるし、結局はなんでも自分の力で作れるんじゃないかって思ったんです。
それで、趣味で子どもや家族の健康のために味噌や梅干し発酵食品を作るようになりました。

 

:そして、二つ目の転機が、東日本大震災。3.11ですね。千葉に住んでいたのですが、NHKで原発の爆発映像を見てすぐ家族で西に逃げたんです。首都高が閉鎖されるかもと思って。

それでね、震災を通して時代が大きくかわったことを体感して。残りの人生は、自分が本質的だと思うことに自分の人生をかけて勝負しようと思ったんです。震災がある意味背中を押してくれた感じ。

それで、その時自分にとって「発酵」ということが非常に本質的なことであることは間違いなかったので、「発酵」をテーマにした事業をつくることを決めたのです。
その中で、留学先のスウェーデンで現場をみてから仕事として取り組んできていた「健康・予防医療」を食の観点から組み合わせていきました。

こうして立ち上がったのが、発酵食堂カモシカです。

中村:『命は命で元気になる』というのがコンセプトなんですよね?

:はい。発酵食は微生物が作り出すものなので生きた命を食べることになるんです。
その微生物は、いわゆる「菌」と呼ばれるものですが、腸を整えると健康になるといわれているように、いい働きをしてくれるんです。

だから、『命は命で元気になる。』というコンセプトでやっています。

 

 

 

解毒作用のある発酵食はこれから生きる子どもたちのために、めちゃくちゃ大事


 

中村:発酵食の魅力はなんですか?

:無限に面白いところ。私、お酒も好きですし(笑)そして解毒作用にも魅力を感じています。

中村:解毒作用?

:はい、面白い実験があります。ネズミに普通のエサとお味噌をまぜたエサをたべさせて、小腸に放射線を照射したところ、お味噌をたべていたネズミの小腸の再生率は非常に高かったのです。

中村:へええ、すごい!

 

:あるいは、長崎に原子力爆弾が落ちた時に、爆心地に非常に近い病院で働いていたお医者さんが、被爆後すぐにしたことはスタッフ、患者さんに非常に濃い味噌汁を飲ませることでした。
その結果、その方々の被爆の影響が非常に軽かったという事実もあります。

つまり、味噌にはなんらかの放射能の影響を軽くしたり、あるいは解毒する作用があるということだと思います。

中村:面白いですね!

:そう。だから、解毒作用のある発酵食はこれから生きる子どもたちのために、めちゃくちゃ大事な手段になると思う。

中村:確かに。安全なものを創ろう・食べようとしても、すぐに全部を切り替えるのは難しい。一方で、食べてしまった体を解毒するという視点は新しくてとても面白いです。

母から子へ、おっぱいで良い菌を移していく


 

中村:発酵食はいつからたべられるのですか?おすすめの食べ方もあったら教えてください。

:まず良いのはぬか漬けだと思います。
腸内環境の観点で大事なのは、食物繊維をきちんと摂ること。腸内環境の菌の餌になるので。あと、生きた菌を入れるっていうこと。

その両方がぬか漬けでできるんですよね。
野菜の食物繊維を摂りつつ、菌を入れるということが。離乳食の進み具合にもよると思うのですが、1歳半ぐらいからかな?
生味噌とか梅干しもいいですよ。天然のミネラルをちゃんと含んだお塩とか、クエン酸も摂れますし。添加物をできるだけ食べさせないことも大切です。

あと、母乳をあげている時期に、ママ自身が発酵食をしっかり摂ることも大切です。
子どもの腸内環境って早いうちに決まるので、菌の多様性をどんどんあげていったほうがいいんですね。

だから、お母さんがしっかり生きた菌を摂って、子どもがお母さんのおっぱいをたっぷりもらって、母子の間で菌を移行させる。これをちゃんとやるということは、健康な体の獲得につながります。

:それに、母乳をあげる時って、すごくお腹がすいて、いっぱい食べるから、胃腸に負担もかかりやすいと思うの。そういう意味でも、消化吸収の良い発酵食は理にかなっていると思います。

中村:なるほど。

:あと、腸と精神って実は連動していて、お母さんが精神的に安定している状態をつくるためには、まず腸内環境を整えないといけないんです。
だから、私は発酵食品を積極的に食べるようにしていましたね。

中村:腸と精神って繋がっているなんて、知りませんでした。
本当に今日は知らないことだらけで、とても勉強になりました。

 

 

発酵食を台所に取り戻したい


 

中村:最後に今後の目標について、教えてください。

:一つは、発酵食を台所に取り戻すことが目標です。

やっぱり食のベースは日本人にとって発酵食だと思うんですよ。味噌とか醤油とか。
その食のベースを、自分の手の中に取り戻すっていうことが、当たり前になる社会というのが、私が描いている社会です。

例えば、当たり前のように味噌を仕込む、梅干し漬けるっていう、基本的な食のことが各家庭で行われていたら、食生活から腸内環境が整って、最終的には病気の予防に繋がりますし。子どもはその様子を見て、育つ。
そして、同じことをさらに次の世代へ引き継いでいく。
そういう未来になって欲しいなと思います。

:それから、やっぱりちゃんと食べないと、絶対こんなしんどい社会生きていけないと思うんです。

特に、若い世代の、働いて生産性を求められて、物事を生み出さなきゃいけない人を一番大事にしなきゃいけないと思っていて。
その人たちの腸内環境を上げていくために、何ができるのかっていうのは考えています。
そのための取り組みも一昨年から始めてるんです。まだまだですけど…。

中村:ありがとうございました。知らないことだらけで、とても勉強になりました。食の安全の問題は、日本だけのことではないので、寿司やラーメンだけでなく、日本の発酵食も、ぜひ世界に広めていきたいですね。

まずは、バングラデシュの自社工房に食堂を創りたいと思っているので、そこでぬか漬けを提供したいと思います。あ、発酵しすぎちゃうかな(笑)

 

Information

発酵食堂カモシカ(発酵食レストラン・カフェ)
〒616-8371
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺若宮町17−1
TEL:075-862-0106

発酵マルシェ(発酵食品・雑貨の販売)
〒616-8371
京都府京都市右京区嵯峨天龍寺若宮町21−2
TEL:075-748-0186
http://kamoshika.kyoto.jp/

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